ついにボクの師匠、ミナクシを浮かすことができました。

ミナクシはボクが最初にWATSUを習ったお師匠さんです。ボクは彼女に習ったことで、いつかWATSUをライフワークにしたいと思えるようになりました。彼女は、単にWATSUという技術を教えているのでなく、WATSUを通して人が自分自身を成長させるプロセスを女神のようなほほ笑みで見守ってくれます。
ミナクシは、ボクが最初にフロリダでWATSUの1,2,3を習った頃から応援してくれて、WABAの教育委員会にかけあって例外的に飛び級でプラクティショナーに認定してくれたり、その後、いろいろなインストラクターを紹介してくれたり、ボクがインストラクターになるプロセスを陰に陽に支えてくれました。

でも、ボクは彼女に浮いてもらったことが一度もなかったんです。
これまで何千時間と水の中で仕事をしてきて、65歳の彼女は特に講習中は自分の頭を水に浸けたがりません。日本でも到着翌日からセッション、講習、そしてセッションと9日間連続で何時間も水に入ってもらっている中で、セッションを受けてもらうことにはボクもかなり抵抗があったのですが、どうしても受けてもらいたかったんです。冗談ではぐらかす彼女に粘り強く交渉してようやくたどりけました。

ミナクシに浮いてもらいたかった理由の1つは、自分自身にとっての卒業式のつもりでした。これまでに「できるから」というだけで例外的な措置をしてもらったことがあるのかもしれません。インストラクターになる前に、当然、セラピストとして卒業してなきゃいけないんですが、自分自身は何かそこに完結感というか、やり遂げた感がなかったのです。ボクも前しか向いていなかったからだと思います。自分の行きたい所に行くために「次は何をすればいい?」それしか考える余裕がなかったのだと思います。その後、いろんなインストラクターにも習って、これまでに3000時間以上のクラスを受講してきましたが、その穴を埋めれないまま今に至っていました。
今回、ミナクシを日本に招いたのは、ミナクシのおかげで8年かけてインストラクターになって、日本の認定校になって、沖縄WATSUセンターを設立して、WATSUを始めてから13年、「ここまで来たよ!」と師匠に見せたかったんです。そして、自分自身にとって遅ればせながらの卒業式をしめやかに執り行いたかった。そういうことでした。

それにもう1つ理由があります。
これまでいろいろな人に教わって考えてきて、自分なりのWATSUの理論を組み立ててきました。ミナクシには「リング・コネクション」と名付けて説明しました。今ボクのWATSUの講習で教えている内容の根底にある考え方です。それは、レシーバーにとって安心感のあるサポートであって、同時に、動きのストレッチ効果を最大限出すためのワークであって、さらに、ギバーがもっとも強く柔らかく効率的に動くためのボディメカニクスでもあります。
去年、イタリアで行われたWATSUのインストラクター会議に参加してきて、ヨーロッパの熟練のインストラクターと技術交流して感じたのが、日本でWATSU-2を終了した方々の方がよっぽどヘッドサポートがいいということでした。この時に、この理論が間違っていないことを確信しました。
ミナクシは、他のほとんどのWATSUのインストラクターと同様に、あまりフィジカルな面についてはうるさくありません。彼女は指圧などの経絡療法やヨガ、マイオフェイシャル、クレニオセイクラルなどもすごく勉強しているので、それらの技術とともに、それに裏付けされた素晴らしい直感力があります。他のインストラクターも同様です。何かWATSU以外に何らかのボディワークやエナジーワークを勉強していて、そういう専門性がWATSUに混ざることで素晴らしいセッションができるんです。

でも、「それでは、WATSUとして教えるべきは何か?」そう思うんです。
他のボディワークの要素がブレンドされてもイケるし、それ単体でもイケる。料理でいう「ダシ」のようなベース。それを作るためには、フィジカル面の教育は欠かせないと強く思います。その点をミナクシに提案したかったのです。
ミナクシは、リング・コネクション理論については、説明だけでもすごく興味をもってくれました。説明を聞いてからいろんな角度から質問をぶつけてくれて、将来的にWATSUのインストラクターを養成するプログラムに取り込んでいきたいと、深く理解をしてくれました。でも、まだ、その時点ではボクのWATSUをまだ受けてもらっていません。

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ミナクシはセッション後、「ジャハラよりいい!」と賞賛してくれました。
ボクにとってはすごい評価です。ジャハラとは、かつてのWATSUインストラクターの一人でもあったマリオ・ジャハラ氏のことで、Jahara Techniqueの生みの親です。フィジカル面の造形が深く、WATSUの発展に大きくかかわった人ですが、最終的にはWATSUと折り合いがつかずに今は完全にWATSUインストラクターをやめて独自にジャハラをやっています。ミナクシはかつて、ジャハラと技術交換を重ねてWATSUに彼のノウハウを取り込んだ張本人ですし、今でも交流関係が続いているので、彼女の中では「WATSUでフィジカルといえばジャハラ」なのです。

それはそれでもちろん嬉しいのですが、それよりも、ボクはミナクシにセッションができて、感慨深くて泣きそうでした。

ていうか、泣けました。

もう感謝の気持ちでいっぱいです。

これまでのワツラーとしての自分の歩みがすべてよみがえってきました。自分ではそんなに苦労したとは思っていないのですが、けっこう長い道のりだったし、ミナクシはそのすべてのステップを知っている恩師なので、じわじわと塩っぱいものが流れてきました。
しばらくじっと水の中で動けなくなっていたのですが、それをまたミナクシは目をつむり、ほほ笑みをたたえながら待っていてくれました。

なんなんだろ、この人。
大好きなんですけど。